手芸としてのオヤ、手工芸としてのオヤ。トルコ各地域の文化がつまった伝統手工芸。
トルコも近代化が進み、生活様式が変わる中、オヤが果たしてきた役割は薄れ、オヤの文化そのものが
廃れています。中でも、イーネオヤは、縫い針1本のみを使用して全てを編み上げるという高度な技術を要するため、
作り手の数は減り続けています。
手芸として、一般的に普及しているかぎ針のレースのようなものとは異なり、トルコの女性が誰でも編めるという
ものではありません。形や技術にも地域差があり、特に、立体の形を編める地域は、限られています。
トルコの手芸及び手工芸は、親から子へと脈々と受け継がれ、その土地の文化や技術が継承されていきました。
しかし、現在その伝統の多くは失われています。残念なことではありますが、時代の流れの中、仕方のないことでもあります。
難しいことでしょうが、出来ることならば地域の伝統文化の保存や記録が、なされていくことを祈らずにはいられません。
一般的には、現在、販売用に編まれているイーネオヤを、まず目にする機会が多いかと思います。
販売用ということもあり、市場主義としての形に走らざるを得ず、本来の意味と技術を失い始めていますが、
イーネオヤというものを世界に広めるという意味では、大きな役割を果たしています。
イーネオヤと聞いて、化学繊維で編まれた決まった形状しか思い浮かべることができないならば、それだけを
イーネオヤと早合点せずに、イーネオヤを扱う骨董商の店先をのぞいて見て下さい。
絹糸や綿糸で編まれた様々な形、色彩のイーネオヤを見ることが出来ます。
更に深く知ろうとすれば、地域ごとの違いの大きさに驚くことでしょう。
広大な国土を有するトルコは、東西南北、様々な気候や風土が存在します。その中で、イーネオヤも各地域ごとに
独自の発展を遂げたのです。このようにイーネオヤは、手芸としての認識をはるかに超えた独特の伝統文化の1つです。
販売製品としてのイーネオヤが、イーネオヤの全てではありません。
本来は、作り手の感情とその土地の文化が詰まった伝統手工芸・芸術なのです。
イーネオヤに興味をもたれたならば、「可愛らしいもの」という認識で終わらせずに、是非、より深い意味としての
イーネオヤにも目を向けていただければと思います。
そして、単なる手芸・製品としてではなく、深い意味でのイーネオヤの保存と紹介に、努めていただけると幸いです。